| ◆土地の所有者が死亡した場合その土地は誰のものになるか? 事例)甲土地の所有者である山田太郎が死亡した。相続人は、次郎、よし男の2人のみである。 Q 甲土地は次郎およびよし男の遺産分割協議により、よし男の単独所有となったが、相続の登記をする前に、次郎が甲土地を第三者である佐藤さんに売り渡し、所有権移転登記をした。この場合、遺産分割協議により、単独所有者となったよし男は、佐藤さんに対して自分が単独の所有者であることを主張できるか? A できない。 遺産分割により本来の相続分と異なる権利を取得したよし男(相続人)は、その旨の登記を経なければ、遺産分割後に権利を取得した佐藤さん(第三者)に対抗できない。(民909) 判例昭和43年1月26日 Q 上記の事例において、山田太郎は生前に佐藤さんに甲土地を譲渡していた。にもかかわらず次郎、よし男は相続登記をし、甲土地を松本さんに売り渡し、登記も済ませた。この場合佐藤さんは松本さんに対して甲土地の所有権を主張することができるか? 山田太郎→佐藤さん | (相続人)次郎とよし男→ 松本(登記済み) A できない。 山田太郎(被相続人)から権利を取得した佐藤さんと、次郎、よし男(相続人)から権利を取得した松本さんとは二重譲渡と同視でき、対抗関係となるから。 Q 上記の事例において、山田太郎は生前、次郎に甲土地を贈与したがその登記をしない間に死亡した。 山田太郎が、その財産の全部をよし男に包括的に遺贈し、よし男がその登記をした。この場合、次郎は甲土地の所有権をよし男に対して主張できるか? A できる。 この場合次郎と、よし男は当事者の関係にたち、民177条の第三者にあたらないので、次郎はよし男に対して登記なくして甲土地の所有権全部の主張ができる。 〜包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有する。 Q 上記の事例において、山田太郎は生前、次郎に甲土地を贈与したがその登記をしない間に死亡した。 山田太郎が、甲土地をよし男に遺贈し、よし男がその旨の登記をした。次郎は甲土地の所有権の全部をよし男に対して主張できるか? Aできない。 山田太郎(被相続人)の次郎への生前贈与と、山田太郎(被相続人)のよし男への遺贈とは二重譲渡と同視でき、対抗関係となるから。〜よし男が先に登記をしている。(民177)判例昭和46年11月16日 ◆父が死亡したあと、金融業者が借金の取立てに来たら・・・ Q Aの父Bが死亡した。Bはアパート住まいで、資産はまったくなく、Aもそう信じていた。しかし父Bが死亡して3ヶ月経ったある日、金融業者Cが、「Bの借金600万円を払ってくれ」と言ってきた。Aはこの借金を払わなくてすむ方法はあるか? A ある。 Aは相続の放棄をすればよい。尚、通常、相続の放棄は、自分のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内にしなければならないが、これは熟慮期間であり、この期間を延長することも可能。またAのように、父Bに相続財産がまったくないと信じており、またそう信じるについて相当の理由のある場合には、財産(負の財産、借金)の存在を知ったときから3ヶ月内に、相続放棄の手続きを取ればよい。そうすればCに払う必要はなくなる。(民915) ◆療養看護をしていたが、相続財産は取得できるか?1 Q AとBは一緒に暮らしており、又BはAの療養看護を懸命にしていたが、Aが死亡した。Aには子Cがいるが、子Cは何の世話もせずに音信不通状態だった。この場合BはAの相続財産を取得できるか? A できない。 いくら療養看護をしていても、Bは配偶者ではないので相続人ではない。又、相続人Cが存在するため、Bは相続財産を取得できない。 ◆療養看護をしていたが、相続財産は取得できるか?2 Q AとBは一緒に暮らしており、又BはAの療養看護を懸命にしていたが、Aが死亡した。Aには親、妻、子供、兄弟(相続人)はいない。この場合BはAの相続財産を取得できるか? A できる可能性がある。 相続人がいない場合、Bは特別縁故者としてAの相続財産の全部または一部の取得することも可能。(民958の3) ◆相続欠格者 Q Aは父Bに対する殺人未遂の罪で刑に処せられた。父Bには配偶者である母Cがいた。 この場合、Aは父の相続人になることができるか?又母が死亡した場合、その相続人になることができるか? A Aは 父の相続人になれないだけでなく、母の相続人になることもできない。 父は母の相続に関してはAと同順位の相続人であるから、Aは相続欠格者となる(民891) ◆自分の財産を相続させたくない子がいるときは・・・ Q 父Bは日ごろから子Aから虐待を受けていたので、子Aに自分の財産を相続させたくないと思っていた。この場合、子Aを相続人から廃除する方法はあるか? A ある。 遺留分を有する推定相続人(子A)が被相続人(B)に対して虐待をしたり、重大な侮辱を加えたとき、または推定相続人にその他著しい非行があったときは、被相続人(B)は、推定相続人(A)の廃除を家庭裁判所に請求できる。(民892) ◆相続の廃除をしたが、自分の子に相続させたくなったら・・・ Q 父Bは相続の廃除により、子Aの相続権を失わせたが、気が変わり、子Aに自分の財産を相続させたくなった。この場合相続の廃除の取り消しをすることはできるか? A できる。 父Bはいつでも、推定相続人Aの廃除の取り消しを家庭裁判所に請求できる。 そのため「相続の廃除を取り消す」とAに意思表示しただけでは認められない。廃除の取り消しは、家庭裁判所に請求し、調停、審判によって効力が生じる。(民894) ◆扶養義務も相続の対象になるのか? Q 子Aの両親B、Cが死亡したため、Bの兄であるDが、3親等内の親族として(民877)、子Aを扶養することになった。そして毎月10万円を子Aに支払うことになっていた。ところがDが死亡した。この場合Dの相続人は、Aに毎月10万円を支払わなければならないのか? A 払わなくてもよい。 扶養の義務は被相続人の一身に専属する権利にあたるため相続の対象とならない。(民896) ◆法定相続分はいくら?1 Q Aには配偶者B、子Cがいたが、Aが遺産1500万円を残して死亡した。この場合子Cの法定相続分はいくらか? A 750万円 配偶者Bと子Cが半分ずつに分ける。(民900) ◆法定相続分はいくら?2 Q Aには配偶者B、子C、Dがいたが、Aが遺産1500万円を残して死亡した。この場合子Cの法定相続分はいくらか? A 375万円 配偶者Bが2分の1の750万円、あとの2分の1の750万円を子C、Dが半分ずつに分ける。1500万円×2分の1×2分の1=375万円 ◆法定相続分はいくら?3 Q Aには配偶者B、子C、そして愛人の子Dがいたが、Aが遺産1500万円を残して死亡した。Aは子Dを認知している。この場合、子Cの法定相続分はいくらか? 愛人 A━配偶者B | | 子D 子C A 500万円。 配偶者Bは2分の1の750万。子CはAの嫡出子であるが、子Dは嫡出子でないので、1500万円×2分の1×3分の2=500万円が子Cの法定相続分。 1500万円×2分の1×3分の1=250万円が子Dの法定相続分となる。(民900条4号) ◆被相続人が遺言で法定相続分と異なる定めをしていた場合 Q Aには配偶者B、子Cがいたが、Aが遺産1500万円を残して死亡した。この場合法定相続分は配偶者Bが750万円、子750万円となるが、Aが遺言で法定相続分と異なる金額(配偶者Bが900万円、子600万円)を定めていた場合、どちらの金額で相続することになるのか? A Aが遺言で定めた金額(配偶者Bが900万円、子600万円)で相続することになる。相続分の指定がある場合には、法定相続分の規定は適用されない。(民902) ◆遺言で相続分の指定があったが、それと異なる遺産の分け方をすることができるか? Q Aには配偶者B、子Cがいたが、Aが遺産1500万円を残して死亡した。遺言によりBとCの相続分をBが1500万、Cが0万円と指定されていた。この場合B、Cの協議によってこの指定と異なる割合で相続財産を分割することができるか? A 遺言執行者がないときには可能。しかし、遺言執行者がいるときは、遺言執行者がその指定に従って分割をする必要があり、相続人は相続財産に対する管理処分を失うことから、遺産分割協議はできない。 ◆遺留分はいくらか? Q 上記の例において、Bが1500万の相続財産を受けた。この場合は、遺留分に反することになるが、子Cの遺留分額はいくらか? A 375万円 1500万÷2分の1=750万円(総体的遺留分) 750万÷2分の1=375万円(個別的遺留分)。Cは375万円の減殺請求が可能。 ◆遺留分に反する遺言は無効か? Q 上記の例のような、遺留分を侵害する指定相続分があった場合は、その遺言自体無効となるのか? A 無効にならない。 遺留分減殺請求がされたときに、遺留分を侵害する範囲でのみ効果が失われるだけ。子Cがお金を請求しないのであれば(遺留分減殺請求しないのであれば)、Bは1500万円をそのままもらえる。 ◆遺留分減殺請求で誰からいくらもらえるのか? Q Aには配偶者B、子C、Dがいたが、Aが遺産1500万円を残して死亡した。AはWに500万円の遺贈をし、Xには相続開始の8ヶ月前に1500万円の贈与をし、Yには相続の開始前2年前に800万円の贈与をし、又、Zには相続の3年前に1000万円の贈与をした。Yは贈与を受けた当時、遺留分を侵害するとの認識はなかったが、AとZは遺留分を侵害する贈与であることを知っていた。 子Dは誰に対してどれだけのお金をもらえるか?(遺留分減殺請求権の行使ができるか?) X Y(善意) Z(悪意) 1500万贈与 800万贈与 1000万贈与 ↑ ↑ ↑ W500万遺贈←A1500万残して死亡━━━━━━━━━━配偶者B | 子C 、D A 遺産1500万円+1500万円(Xへの贈与分)+1000万円(Zへの贈与分) =遺留分算定の基礎となる財産4000万円 (上記計算式の解説↓) ・Xへの贈与は、相続開始前の1年内の8ヶ月前にした贈与なので、遺産1500万円に贈与金1500万円を足すことになる。 ・Yへの贈与は、相続開始前1年以上前の2年前にしたものであり、しかもYは善意なので800万円は足さない。 ・Zへの贈与は相続開始前1年以上前の3年前にしたものであるが、当事者双方のAとZが悪意者なので、遺産1500万円に1000万円を足すことになる。(民1030) そして4000万円×2分の1で総体的遺留分は2000万円。(民1028) 配偶者Bの個別的遺留分は1000万円 子Cの個別的遺留分は500万円 子Dの個別的遺留分は500万円となる。 遺産1500万円−Wの遺贈分500万円=残った財産1000万円。 この1000万円を法定相続分で分けると、 配偶者500万円 子C250万円 子D250万円(民900) つまり子Dは250万円相続分としてもらったということになる。 子Dの個別的遺留分は500万円なので、すでにもらった250万円を引くと250万円。 つまりあと250万円誰かからお金をもらえるということになる。(遺留分減殺請求できるということ) そして、遺贈と、贈与がある場合には、遺贈を先に減殺することになっているので(民1033) Wに250万円を請求できる。 ◆遺留分減殺請求はいつまでならできるのか? Q 遺留分減殺請求権(自分に相続分があるのに、お金をもらえなかった場合に請求する権利)はいつまでならできるのか? A 遺留分権利者が(上記の例では子Dが)、相続の開始と減殺できる贈与または遺贈があったことを知ったときから1年内ならできる。1年経つと時効により消滅する。相続開始から10年経過したときも時効により消滅する。(民1042) ◆遺留分の放棄はできるか? Q 遺留分の放棄はできるか? A 相続開始前は、家庭裁判所の許可を得ればできる。相続開始後であれば許可なしで自由に放棄できる。(民1043) ◆被相続人の兄は遺留分減殺請求できるか? Q Aが死亡し、相続人は兄のBのみであった。Aは生前に財産のすべてをCに贈与していた。この場合、兄Bは遺留分が侵害されたとして、Cに遺留分減殺請求(自分に相続分があるのに、お金をもらえなかったためCにお金を請求)することができるか? A できない。 兄Bは相続人ではあるが、兄弟姉妹には遺留分はないので、請求できない。(民1028) ◆子供が遺言をして死亡したら・・・ Q 15歳の子Aが遺言をして死亡した場合、この遺言は有効か? A 有効。 15歳になれば遺言をすることができる。この場合法定代理人(親)の同意も要らず、単独で有効にできる。※14歳ではできない。(民961) ◆遺言書を書いた後、その遺言の内容物を第三者に贈与したらどうなる? Q Aは遺言で「子Bに甲建物を相続させる」「子Cには乙自動車を相続させる」という遺言(自筆証書遺言を)をした。その後、Aは乙自動車を友人Dに贈与した。この場合、先にした遺言自体の効力がなくなるのか? A 遺言の全部が無効になるわけではない。 贈与と抵触する「子Cに乙自動車を相続させる」という部分は効力を生じないが、「子Bに甲建物を相続させる」という部分の遺言の効力は存続する。(民1023) ◆遺言書に日付を記載しなかったが、この遺言書は有効か? Q Aは自筆証書による遺言を作成したが、作成日付を記載しなかった。この場合、遺言書は無効か? A 無効。 「平成17年3月」と記しても無効。日にちまでしっかり書かなければならない。 ◆危急時遺言の遺言書に日付を記載しなかったが、この遺言書は有効か? Q 危急時遺言の遺言書に日付が記載されていない場合、この遺言も無効か? A 無効ではない。 危急時遺言(危急に迫った者がする遺言)の場合は、日付が記載されていなくても、遺言の時期は、証人、立会人によって確認できるから。(民976) ◆遺言書の氏名に本名を書かなかった場合は? Q Aは自筆証書による遺言を作成したが、氏名として「あだ名、呼び名」を記載した。 この場合、遺言書は無効か? A その「あだ名、呼び名」の記載で遺言者本人とわかる場合には、有効となる(可能性が高い。) ◆遺言書をワープロで作成した場合は有効か? Q Aは自筆証書遺言を、手書きでなく、ワープロで作成した。この場合でも、遺言書として効力を生じるか? A 生じない。 自筆証書遺言の場合は手書き(自筆)で遺言内容を記載することが必要。(民968) 尚、秘密証書遺言の場合は、ワープロで遺言内容を記載しても有効。(民970) |